データサイエンティストがこれから10年以内に消える理由3つ
私は毎日、ある統計的な計算とそれにまつわる設計開発作業を行っている人間です。
最近、私のことをデータサイエンティストと呼ぶ方が最近多いので、正直そう呼ぶのはやめてほしいのでブログを書くことにしました。
私の持論は
データサイエンティストなる呼称は日本に根付かず、10年も経たずに陳腐化されて消えてしまうでしょう
です。それはもうインフォメーションアーキテクトとかITコーディネータとかと同じ黒歴史な呼称の一つになるとしか思えないのです。呼称は廃れてただのアナリストかエンジニアになるでしょう。
その理由は3つ
- 米国発のキーワードであること
- サイエンティストではないこと
- そう呼ばれてうれしくないこと、あるいは、それを自称しにくいこと
順番に説明しましょう。
米国発のキーワードであること
今世紀最も熱い職業「データサイエンティスト」とは
http://matome.naver.jp/odai/2136030611004089901
Googleのチーフ・エコノミストが語った『私はこれからの10年で最もセクシーな職業は統計家だろうって言い続けてるんだ。
出典ハーバード・ビジネス・レビュー
どこがセクシーか。米国の金融業界のアナリスト給与体系に夢重ねないでください。はっきりいうけどデータマイニングのマイニングって土堀りですよ。データ土方。それに、現在それにふさわしい方って確率的に平均年齢高め、容姿は確率的に低めでね。セクシーとかクールとか言われても自虐的な感じですよ。
なぜ米国発かというと、米国の雇用と給与体系がそうさせるんです。例えば米国の場合、プログラマーと言われれば、勤続1年でも勤続5年でもさしたる給与の違いはありません。一方、日本の場合、プログラマーといえど勤続1年と5年では給与ははっきりと違います。いわゆる年功序列です。
つまり米国は給与と仕事が「肩書」に、日本は給与と仕事が「熟練」に、強く連動しているのです。
だから、米国は給与や待遇を改善するためには、新しい肩書きを作って、それにいち早くなったことにして演じるのです。CxOなんて山ほどあるでしょ。そうして産み落とされた新しい肩書きの一つがデータサイエンティスト。仕事はたいして変わらなくてもアナリストよりデータサイエンティストのほうが給料高そうじゃないですか。今ならね。ただ、米国には国内最高給の業界=金融投資に合わせようとしすぎる癖がいまだに残っています。株式投資の入札オークションからネット広告のRTB(Real-Time Bidding)を作ったようにね。けれど残念ながら、給与や待遇はそこまで高くならないのです。理由はそのうち。
サイエンティストではないこと
科学者ではないのに科学者を名乗ること、名乗っている人に、もう抵抗あります。科学への敬意がないといいますか。インフォメーションサイエンティストとかナレッジサイエンティストとか言わないでしょ。サイエンティストは誰でもデータ使うもんだろうし。データって前置きじゃ、何の専門家かよくわからないので名刺にも書きづらいし。
もちろん科学という言葉の定義はいろいろあるけれど、これは私の持論としても、「測定できないものを語る時点で科学者ではない」とすら思っているんです。だって仮説だらけの世界だし、ほとんどは検証もできないですから。なぜならビジネスでは、測定できるものより、測定できないことが多いから試すわけで、その前提にたって取捨選択して構造設計しなきゃならないのです。
もう一ついえば、ビジネスでは何かしらの理由によって形式知化できないことも多いです。端的には論文にできにくいわけで、なんとか書けたとしても「やったらこうなった論文」が限界でしょう。再利用されたことがある論文は圧倒的に少ない。だから、やはりサイエンティストと名乗るなんておこがましいと思うわけですよ。単にこの職種、高学歴というか博士な方とかが多いからそう言われてるだけなんじゃないのかと。でも、サイエンスな教育を受けた人が従事することが多い職種だからといって、仕事がサイエンスとは限らないわけで、相関と因果の違いがわかっていないようで恥ずかしくなるんです。
そう呼ばれてうれしくないこと、あるいは、それを自称しにくいこと
結局、そう呼ばれてうれしいですかね。
「あなたの職業はなんですか?」「もっともセクシーな職業のデータサイエンティストです!」と言えんの?お前、サバンナじゃなくて銀行ローンの審査のときにも同じこといえるでしょうか?
発音が下手くそなのに英語教師やってると言うような、経営者になった経験もないのにMBA教授ですと言ってるかのようだよ。とても微妙でムズがゆい気持ちになるよ。もうサイエンティストって言い方が日本になじまないような。それに自称データサイエンティストな方たちもいるはいるけれど、私の見ている限り、名乗りたくなさそうにしている人のほうが圧倒的に多く潜んでいる気がするんですよね。恥ずかしいのに我慢しているって意味ではセクシーかもしれません。あと、たまに行き場を失った統計家の方が半ば強引に、統計=データサイエンティストという関連付けに一生懸命なのも気味悪いと思います。最強の学問とは思わないけど寿命の長い統計が、むしろ短命そうなデータサイエンティストに擦り寄る必要なんてないと思うけど。一緒に葬られたら困りますし。まるでISO規格やプライバシーポリシーやITSSスキル標準みたいによってたかって暇な方が定義しちゃってダサくなって、今じゃ誰も見向きもしない、あの感じとよく似ているんですよ。データサイエンティストの資格とか、どの面さげてやってるんでしょう。仕事内容も扱うデータも千差万別なのにね。
ほんとごめんなさい。
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