ネガティブにデータサイエンティストでもないブログ

経済統計屋。気分悪くなったらごめんなさい (´・д・`) ゴメンネ データサイエンティストという呼称が好きじゃないんです https://twitter.com/dscax

労働の二極化に抵抗する、上級者への簡単な道~とあるカキ氷屋の統計技師(データサイエンティスト)

 本記事は長くなりすぎて端折った前回の続きです。前回を読まなくても読めます。

 労働の二極化に抵抗する、捨てるを捨てないという1つの選択肢 

http://negative.hateblo.jp/entry/2013/09/02/202445

前回言及できなかった意味不明なままのカキ氷まで話を広げます。

 

 

前回論じたように、スキルの差は拡大していく一方です。世の中には確実に上級者と呼ばれる人が存在します。これは一体なぜでしょうか。

 

経済金融だって医療だってネット広告だってどの分野でも同じことですが、上級者は皆、特化した戦力を持っています。経済を俯瞰する私のスコープから見れば、上級者とは需要に選ばれし者であり供給に見放された者のことではないかと思っています。

 

皆さん、特別なことではありません。会社組織業務のスコープを変えれば、個人家族友人共同体のスコープを変えるだけで、誰でもそうなりえます。

 

極一部なニッチな世界だけれどもFORTRANCOBOLの人材だって部分的に高騰しているんです。少し前ならユビキタスやらのデバイス開発でC++技術者が一気に消えたりね。ちょっと言いにくいけど、今なら某回線のネットワーク技術者なんかもいなくなりすぎて高騰しています。ADSLの時代は終わったと皆がいなくなったからこそ、残った需要が、相対的に価値が高まっているわけですね。ビッグデータ潮流がこのまま計算基盤に寄っていくならインフラエンジニア全体もそうなるかもしれません。ビッグデータという少々、誇張の混じったパンドラの箱にも最後に希望が残っているといいのですが。

 

 

どんな局面も60点取れますという汎用性では中級以上にはなれません。前述の二極化で述べたように、それ以上の仕事がもらえなくなる世の中になりつつあるからです。より能力の高い者、より信頼できる者、より速い者に仕事を発注したくなるのが心情です。より安い者は能力が等しいときだけの指標にすぎません。そのことを、もはや価格弾力性というより、スキル弾力性というべき造語を作って理解を試みます。

 

スキル弾力性は(ネーミングの意義は微妙に正しくないのですが)とりあえず、価格(や給料、サービスの対価)の変動によって担当する能力やスキルが変化する度合いを示す数値とします。スキル弾力性が小さい場合は、価格を変更してもほとんど担当者のスキルは変化しませんが、スキル弾力性が大きいと、価格が変わると担当者のスキルが大きく変化します。

 

つまり、今までのSIやシステム構築は人月計算や固定給としてスキル弾力性は小さく努めてきたわけです。しかし今後、分析やエージェンシーになってくると、ネット販促における成果報酬やファンドの信託報酬などでは明らかにスキル弾力性が大きくなっていくと予想されます。

 

したがって汎用スキルの用事はなく専門スキルと能力競争(=高度な属人性)になっていくと予想できます。100万円で50点の人間と、105万円で95点の人間のどちらかに発注できるとしたらどうでしょう。クラウドソーシングなどの潮流もあいまって、その流れはさらに加速していくかもしれません。すでに一部では、名指しの仕事が増えています。このように変動的な成果を約束する分析のような仕事においては、1つだけは100点を超える専門性と創造性の発揮でしか、今後の未知な仕事に、呼ばれにくくなっていくのではないかと私は危惧しています。

 

ある意味、それしか真なる上級者への道はありません。上級者の定義は、上司や仲間内の、組織内や村社会や属するコミュニティの評価ではまったくありません。世界や権威からの評価は、それに近いけれども少し違います。不要な権威は劇的に滅びるのでアテになりません。大学や病院のポストが詰まって新陳代謝が行われないのが良い例です。評価ではなく組織の硬直性で決まるのでは違います。

 

だから正確に言うならば、ほぼ当たり前のことですけども、真なる上級者とは

 

その人でなくては仕事ができない程度(代替財が存在しないか少ない)

その仕事の未来の需要(潜在需要)

 

で決定されます。個人に影響を与えることながら全体の問題であることに注意してください。個人が、会社が、メディアが、国が、何を掲げ何を言おうとも、それが事実です。それ以外にありません。つまり

 

自分の仕事が世の中で必要であり、それが他人にできなければ良いのです。 

品のない言い方かもしれないので、言い直しましょう。 

自分にしかできない仕事が、世の中に必要とされれば良いのです。

 

ドラッカーの「経済人の終わり」に代表されるように、かつて経済人(homo economicus)という「経済合理性のみを追求する完全に合理的な人間」という想定は様々な学者に批判されました。実際の人間は、多くの場合、利他的であり、そして経済学が想定するほど合理的ではないと。しかし、今後もほんとにそうでしょうか。このような極限の能力競争においては経済合理性の動きに近似していくでしょう。それを目指すわけですから届かなくても近づいていくはずです。限定合理性の枷がはずれる時代は近いかもしれません。

 

これは一見、かなり難しそうに見えますが、そうでもありません。  

 

実務者向けということで硬すぎる話でしたので最後に、解決に向かうために、私のエピソードを紹介させてください。今年の夏の実験を、軽く話して終わりたいと思います。

 

 

 

実は今年の夏は、カキ氷屋をやってました。本気です。

  

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出展)画像はイメージです。実際はこれより全然ボロいです。

 

 

真夏の炎天下に屋台をひいて各地に出張しては、涼を売る、移動カキ氷屋です。

 

もちろん私も本業がありますので、カキ氷屋の司令塔としての参加です。日頃、お世話になっている居酒屋夫婦と夏休みで暇な専門学校生らと一緒に。もちろん(地域次第らしいですが)臨時営業許可もとりました。

  

移動カキ氷屋でもっとも大事なのは当たり前ですけど立地(営業する場所)です。氷とシロップの原価は最初から極限に低いのでほとんど操作変数としては不適です。あとは接客サービスですがそこは居酒屋夫婦にまかせます。

  

私の担当は出没(出店)エリアの調査と探索スケジュールの決定、実際の販売結果と購入者の傾向を分析し、次々に計画を修正しながら利益の最大化を目指すことでした。わかる人にはわかると思いますが、巡回カキ氷屋問題(?)を解くわけです。

 

 

イチゴ一杯300円。ミルク50円。ちと高いです。強気の設定です。

 

 

最初はひどい赤字でした。誰もいない公園や河川敷でやったり、ゲリラ豪雨で閑古鳥だったり、怪しげな人間(役所の人ごめんなさい)にイチャモンつけられたりと、苦戦しました。出没場所はモンテカルロ法っぽく、最初から思い込まないように近郊から適当に数拠点選びました。そこから計測された売上高で絞り込んでいきました。

 

並行して、どの要因が利益に結びつくかの因果関係が重要です。共分散構造分析(SEM)で最適化していきました。やはり、やってみなければわからないことだらけです。まったく予想と異なり、まるで未知の要因が、もっとも利益に直結していることがわかりました。そこからはその要因を基に、地図データや検索エンジン(他の事例)を使って、どんどんパラメータの当てはまりの良い場所を探索しては、営業先候補にしていきました。

  

最初の段階で、ひどい赤字を出して皆に衝撃を与えておいた(ごめんなさい)ので、関係者は炎天下の労働でも音をあげませんでした。ゆっくりでも改善されていたので希望が見えていたからと思います。信頼されるためには最初の期待値を低くすることは大事だと実感します(ごめんなさい)。他のほとんど差別化要素がないと排除したため、次元の呪いもありません。せいぜいカキ氷屋の分析のためにPC1台が占有される程度で、簡単そうで奥深い、面白い分析と予測ができました。

 

季節要因も相まって、苦戦した7月、上向きと分析の8月1週、そして実践の8月の2~3週、お盆頃には、ついにカキ氷屋における約束の地を見つけ出し、辿り着きました。そこで根を張り、後はひたすら営業を続けました。

 

私の予想は良いほうにはずれました。ありがたいことに最初は苦しかった移動カキ氷業も、約束の地に辿り着いてからは私の予想を軽く超え、大繁盛しました。一安心です。猛暑の中、営業努力を続けた居酒屋夫婦も専門学校生も喜びました。専門学校生はバイト代でバイク買ってました。

 

とはいえ、カキ氷なので所詮、売上は微々たるものです。株のほうが当たれば全然稼げます。けれど移動カキ氷屋は、超ローリスクで粗利がとても高いのです。だって水だから。スキルも不要です。誰だってできます。簡単なのです。

 

 

 

そう、ただ誰もやらないだけです。

私ほど移動カキ氷屋においてデータ分析した人はいないでしょう。

 

 

つまり、そういうことではないでしょうか。

 

 

 

どうもありがとうございました。

 

 

 

 

補足)

今夏は今週で店じまいです。私らの屋台だとわかってもそっとしておいてくださいね。よろしくお願いします。

  

来年も稼ぐ予定なので詳細は内緒です。

 

食いっぱぐれてきたら

「とあるカキ氷屋の統計技師(データサイエンティスト)」

でも書きます。カキ氷屋の闇を抉る分析屋の渾身のルポタージュ。

職質されたとか、熱中症で倒れたとか、汗かいて5kg痩せたとか。

 

便乗してごめんなさいね。たまたまかぶったもので・・・

 

 

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